Pinocchio | World

 

LE AVVENTURE DI PINOCCHIO 画:SIGFRIDO BARTOLINI|1966年

FONDAZIONE NAZIONALE‘C.COLLODI ’PESCIA

数何前、イタリア・トスカーナのコロディ村を訪ねました。『ピノキオの冒険』の作家カルロ・コロディは、そのペンネームを生まれ故郷の村名にとっています。美しく慎ましい村でした。主にフィレンツェに出荷する苗木や花の栽培が盛んな地域で、なだらかな丘陵に苗畑が美しい色の帯を描いていました。そのときガイドしてくれたタクシーの運転手は、「イタリア人の家には、聖書と『ピノキオ』の本は必ずあるよ」と得意げに語っていました。


ということで、ピノキオ公園のショップで見つけた、原作『LE AVVENTURE DI PINOCCHIO』を購入。大きな本をかかえて帰国し、イタリア語の辞書と首っ引きで読解に取り組みましたが、どうやら方言や古語も使われているらしく、辞書に載っていない言葉が散見されます。

翻訳はやはり専門家に。最新の翻訳に大岡玲氏による『ピノッキオの冒険』(角川文庫)がありますが、イタリア文学に精通する作家ならではの名訳で、この物語が単なるファンタジーではなく、時代に翻弄された人びとの物語でもあることを気づかせてくれます。『星の王子さま』も倉橋由美子氏(宝島社)が訳してくれたことでようやく読めるようになりました。わたくしにとっての名訳とは、こうした作家によるものです。