Pinocchio | Japan

 

『ひのきまる』著:濱田廣介  画:川上四郎 昭和22(1947)年 尚文舘

児童文学者の濱田廣介氏による日本版『ピノキオ』。きんべえさんがつくった「ひのきまる」の物語は、すでに原作を超えて、ひとつの「ひろすけ童話」に昇華しています。子どもに恵まれなかったことを心に残したまま先立ったおばあさんが、きんべえさんの夢枕に立ち、檜で人形をつくるようお願いするところから、物語は始まります。


「それはそうでも、おじいさん、ひとりぼっちのあなたのことをかんがえて、わたしはちっともおちつくことができません。あの世のきれいなはすのうてな、あの花にしずかにのっていようとしてもできません。いたり立ったりばかりして。」

「おやおや、それはお氣のどく」

「そこで、おじいさん、おねがいをきいてください。」

「どういうことかい。」

「どうぞ、ひとつ、にんぎょうをつくってください。木のにんぎょうでかまいません。それをつくって、うちのむすこにしてください。」


童話における二つの面、すなわち現實面と空想面とが境界線をうしなうような純一化作用をもとめ そうしてそれが藝術性の把握によって可能なものとされた場合に、現實でもなく空想でもない、ある眞実の世界に到達するのである ──濱田廣介 あとがきより